IT技術に関するメモ(主にセキュリティ関連)

Coinhive事件、最高裁で無罪判決

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Coinhive(コインハイブ)事件はご存じでしょうか。
個人として当初からずっと注目していた事件でしたが、令和4年1月20日に最高裁で判決が出ました。
個人的な記録も兼ねて感想を述べたいと思いますが、あくまでも個人の感想です。

はじめに

罰金を払えばすぐに終わった事案ですが、戦うことを選択して長年苦労されたモロ氏に敬意を表します。

最高裁の判決

この裁判は「不正指令電磁的記録保管罪」に問われた事案であり、主な争点が「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」に当たるか否かが争われました。
「その意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき」という要件が「反意図性」、「不正な」という要件が「不正性」と定義されています。

反意図性

判決では「反意図性」は認定されています。
ウェブサイトを閲覧した人にマイニングしていることを告知していなかったり、同意を取っていないため反意図性が認定されたようです。

不正性

判決では「不正性」が認められていません。

  • 閲覧者が気づかない程度の負荷であった
  • 「ウェブサイトの運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは,ウェブサイトによる情報の流通にとって重要」であり、収益のために利用した
  • 広告表示プログラムと比較してPCに与える影響に有意な差異は認められず
  • マイニング自体は仮想通貨の信頼性を確保する仕組み

以上の点から不正ではないと判断されたようです。

判決

「主文。原判決を破棄する。本件控訴を棄却する。」すなわち無罪です。

感想

「ウェブサイトの運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは,ウェブサイトによる情報の流通にとって重要」 が認められたことは良い事だと思います。
ウェブサイトの運営はサーバー代やドメイン代等多くの費用が掛かっていることがありますので、良い情報を提供しているサイトは対価を受け取って欲しいと思っています。
しかし、募金は匿名性の懸念や広告はトラッキング等の懸念があるので、躊躇します。
それに比べて、匿名で良く、計算機能だけで対価を提供出来るのは良い仕組みだと考えています。
ユニセフが募金活動にコインハイブを導入していたのを知った時は画期的だと感じたものです。

無罪判決となったことで、賛否両論様々な意見が沸き起こっていますが、感情論ではなく建設的な議論が行われインターネット空間が良いものになることを願います。
最後に一番印象的だった部分を引用します。

原判決は,不正指令電磁的記録の解釈を誤り,その該当性を判断する際に考慮すべき事情を適切に考慮しなかったため,重大な事実誤認をしたものというべきであり,これらが判決に影響を及ぼすことは明らかであって,原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。

090869_hanrei.pdf (courts.go.jp)

不正指令電磁的記録の解釈により日本のIT業界の将来への懸念がありました。
これが司法に委ねられた結果、「破棄しなければ著しく正義に反する」という判決が出て安堵しました。
セキュリティ系の勉強会も委縮が進んだり閉鎖的になったりしていましたので、ウェブサイトのマイニングに限らず大きな意味を持った判決だと思います。

参考資料

Coinhive事件とは

Coinhive事件 (コインハイブじけん) は、ウェブサイトに暗号通貨 MoneroのマイニングスクリプトであるCoinhiveを設置した者が、サイトの閲覧者に無断でマイニングを行わせたとして検挙された事件である

引用元:Coinhive事件 – Wikipedia

控訴審

一審無罪の「コインハイブ事件」、8日から控訴審 「検察側の主張は的外れ」と弁護側 – 弁護士ドットコム (bengo4.com)

控訴趣意書

控訴答弁書

最高裁

主任弁護人の弁論要旨です。

こういった物が公開されるのはありがたいですね。
文章も読みやすく勉強にもなります。

最高裁の判決

裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

判決全文


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